平均賃金とは|除外や最低保障などわかりやすく解説|労働基準法がわかる!
この記事では「平均賃金」について特集します。
平均賃金の定義や除外されるもの、最低保障などをわかりやすくご紹介していきます。ぜひご参考下さい。
労働基準法の平均賃金の定義
まず平均賃金の定義ですが、労働基準法の法12条では下記の内容で定めています。
労働基準法 法12条
◯1 労働基準法で平均賃金とは、これを算定すべき事由の発生した日以前3箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額をいう。
◯2 前項の期間は、賃金締切日がある場合においては、直前の賃金締切日から起算する。
平均賃金とは、算定すべき事由の発生した日から3ヵ月間前に労働者に対して支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で割り算した金額をさします。割り算の計算式をイメージした際に分子に賃金の総額がきて、分母に暦の日数がくると考えるとわかりやすいでしょう。
①平均賃金(原則)=算定事由が発生した日以前の3か月間の賃金の総額÷その3か月間の暦日数
割り算の分母となる総日数は暦の総日数となり、期間内の労働日ではありません。この点は注意が必要です。また算定すべき事由の発生した日以前3ヵ月間においては、算定すべき事由の発生した日は含まず、その前日から3か月間さかのぼることとなります。
その他、会社において賃金締切日がある場合には、平均賃金の算定期間は算定事由発生日の直前の賃金締切日以前3か月間となります。
日給、時間給、出来高払制等の最低保障
平均賃金においては、賃金が日給や時給、出来高払制等の労働者については最低保障が定められています。
労働基準法 法12条1項ただし書
◯1 平均賃金の金額は、次の各号の一によって計算した金額を下ってはならない。
賃金が、労働した日若しくは時間によって算定され、又は出来高払制その他の請負制によって定められた場合においては、賃金の総額をその期間中に労働した日数で除した金額の100分の60
賃金の一部が、月、週その他一定の期間によって定められた場合においては、その部分の総額をその期間の総日数で除した金額と前号の金額の合算額
賃金が日給や時給、出来高払制等の労働者については、平均賃金の算定する際に、賃金の総額をその期間中に労働した日数で割り算した金額の100分の60を下回ってはいけません。この日給、時間給、出来高払制等の最低保障は、割り算の分母が総日数ではなく労働日数であることがポイントです。
日給や時給、出来高払制等の労働者については、先ほどご紹介した原則的な計算方法による平均賃金と、この最低保障による計算方法での平均賃金の金額を比較して高い方の金額が平均賃金となります。
最低保障の金額が必ずしも平均賃金となるわけではありませんので、ご注意ください。
②日給や時給、出来高払制等の労働者の最低保障=(算定事由が発生した日以前の3か月間の賃金の総額÷その期間の実際の労働日数)×60/100
※①、②のいずれか高い方の金額が平均賃金。
また賃金の一部が月、週その他一定の期間によって定められた場合の労働者(賃金の一部が、月給制、週給制等の場合)においては、その部分の総額をその期間の総日数で除した金額と日給や時給、出来高払制等の労働者の最低保障の平均賃金(先ほどの計算方法)とを合算した金額を下回ってはいけません。
この賃金の一部が月、週その他一定の期間によって定められた場合の労働者においても、原則的な計算方法による平均賃金と、この最低保障による計算方法での平均賃金の金額を比較して高い方の金額が支給されることとなります。
ここまでくるとかなりややこしくなってきます。計算時には一つひとつの計算を丁寧にやっていきましょう。
平均賃金の算定基礎から除外される期間及び賃金
ここからは平均賃金を算定する際に分母の期間、分子の賃金から除外される内容について確認していきましょう。(ここからは難しくなることをさけるため、労働基準法の条文のご紹介は割愛します。既に内容が複雑になってきておりますが、頑張っていきましょう)
平均賃金の算定基礎から除外される内容には、下記の内容があげられます。
平均賃金の算定基礎から控除される期間及びその賃金
・業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業した期間及びその賃金
・産前産後の女性が第65条の規定によって休業した期間及びその賃金
・使用者の責めに帰すべき事由によって休業した期間及びその賃金
・育児・介護休業法に規定する育児休業又は介護休業をした期間及びその賃金
・試みの使用期間及びその賃金
この5つの項目を平均賃金の算定基礎に入れてしまうと平均賃金の額が不当に低くなるおそれがあります。
そのため平均賃金の算定時に分母の期間、分子の賃金から除外されることになっています。
平均賃金の算定基礎となる賃金に含めないもの
次に平均賃金を算定する際に分子の賃金から除外される内容についても確認していきましょう。
下記にあげるような臨時的に支払われる賃金については、平均賃金の算定基礎の賃金の総額に含まないこととされています。
平均の算定基礎となる賃金総額に算入しない賃金
・臨時に支払われた賃金
・3箇月を超える期間ごとに支払われる賃金
・通貨以外のもので支払われた賃金で一定範囲に属さないもの
よくよく考えてみれば当然なのですが、賞与といった3ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金を算定基礎に入れてしまうと算定すべき事由の発生した日によって大きく平均賃金が異なることが分かります。
そのため臨時的に支払われる賃金などは平均賃金の算定基礎に含まないことになっています。
平均賃金の特例
最後に平均賃金の特例についてご紹介します。
この平均賃金の特例とは、平均賃金を算定する際に原則の平均賃金の計算式を用いることが不適切な労働者であり、使用期間にあたる雇入れ後3か月以内の労働者や日々雇入れされる日雇い労働者が該当します。
平均賃金の特例
・雇入後3ヵ月に満たない者の平均賃金は、雇入れ後の期間とその期間中の賃金の総額により平均賃金を算定する。
・日日雇い入れられる者は従事する事業又は職業をもとに厚生労働大臣の定める金額を平均賃金とする。
また、ここまでご紹介した各労働者に該当しないような特殊な労働者の平均賃金を算定する場合は、別途、その平均賃金の金額を厚生労働大臣が定めるとされています。
平均賃金のまとめ
この記事では「平均賃金」について特集しました。
平均賃金は非常にややこしく、労働基準法でも難しい分野に入るテーマです。
この平均賃金をわかりやすく理解するためには、まず平均賃金を算定する対象の労働者が「どのような労働者であるか」をしっかりと押さえることです。
まず初めにこの点をしっかりと押さえることで、その後に行う平均賃金の算定方法(計算式)がわかります。
その上で対象となる労働者に平均賃金の分母となる期間や分子となる賃金、もしくは分子のみの賃金から除外される項目があるかどうかを確認しましょう。
ここまで把握できれば、あとは計算式にそって一つひとつ丁寧に計算すれば対象となる労働者の平均賃金がわかるはずです。
この記事でご紹介した内容が少しでもお役に立てれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました!